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― 人生を最高に生きる 老子の言葉 ―
第52章
「気を専(もっぱ)らにし柔を致し、能く嬰児たらんか。」── 気を大切にし、心と体を柔軟に 赤子のように生きてゆきなさい
暦は春。2月は日本でも最も寒い月といわれますが、天地自然は木々の芽吹きの準備をはじめています。
私たち人間も、あらたな1歩を踏み出すには絶好の季節といえるでしょう。新たな目標に挑戦したり、また家族や大切な人達の目標を支えたりしながら、楽しく元気に過ごすには、なんといっても大切なのは健康ですね。
人間とは弱いもので、少しでも不調や痛いところがあると、仕事の重要な会議も、万全に向かえませんし、友人や家族との楽しいパーティがあったとしても、それがかえって負担になり、楽しく過ごせないものです。
つまり私たちの充実した楽しい人生に、欠かせないのが、健康な心と体なのです。
そこで『老子』です。中国古代に書かれた名著『老子』は哲学の書であると同時に、養生の書でもある、といわれています。今月は『老子』第十章に書かれた養生の秘訣を、ご一緒に学んでみましょう。
老子第十章では、「気」を大切にし、心や体を柔軟にして、赤子のように生きなさい、と教えています。では「気」とはどんなものでしょう?
「気」とは古代中国に生まれた言葉です。私たち人間が生きているこの世界、宇宙には、人間が決して手を加えたり変えたりすることのできない宇宙の原理原則があります。それを発見し、「道」TAOと名付けたのが古代中国の賢人達です。そして、その「道」TAOという法則を運行しているエネルギーの元のようなものが、「気」なのです。そして私たちが日常使っている「気のりがしない」「気迫がある」「気が合う」「気が強い」などといった言葉から、私たちの心や体の状態を、この「気」という言葉がとても細やかに表していることがわかります。
つまり私たち人間が、この「気」を大切にして生きることが「道」TAOに添う生き方であり、幸せに生きる秘訣なのです。
私たちの肉体も無理な使い方をすると、大切な「気」が不足して、痛みや不調につながります。その痛みは「もっと大切に使ってくださいね」という体の声なのです。年齢を重ねるごとに、若い頃より更に「気」を大切にしなければなりません。それは生まれた時に沢山持っていた「気」が、生きるという毎日の活動で、だんだん消耗してくるからなのです。
心労や、働き過ぎ、飲み過ぎ、食べ過ぎなど、過剰なストレスに要注意ですね。過剰なストレスが心や体をかたくなにするのです。またこの季節の冷えも気の流れを悪くし、体を堅くする原因となります。
若いころのような無理はできませんが、「気」を大切にすれば、これまでの豊かな人生の経験を生かして、若い頃より充実した日々があなたを待っているのです。自分の体に感謝しつつ、天地自然を柔軟に受けいれて、明日を楽しみにする陽気な生き方こそが「道」TAOなのです。
※このページは、KKベストセラーズ発行の月刊誌「一個人」の連載記事
「人生を最高に生きる 老子の言葉(早島妙聴監修)」をご紹介しております。
この連載は、定本「老子道徳経の読み方 早島天來編」に更に詳しい解説を加え、
老子の言葉をわかりやすく伝えています。
更新日 2016年2月10日