TOP > 老子・荘子に学ぶ > 人生を最高に生きる 老子の言葉 > 福と禍は隣あわせ
― 人生を最高に生きる 老子の言葉 ―
第四部 我執をいかに捨てるか
第五十八章 福と禍は隣あわせ禍(わざわい)は福の倚(よ)る所(ところ)。
福は禍の伏する所。わざわいの陰には幸運の女神が寄り添っている
新春を迎えて日一日と日照時間も長くなって来ました。
冬から春に向かって変化してゆく一年で最も寒いこの季節は、太陽のぬくもりを特に嬉しく暖かく感じる季節であり、自然という大きな力に生かされている事を実感する一時でもあります。
自然とともにある事が、人間が一番幸せに生きられる道だと教えてくれた、古代中国に生まれた『老子』。
今年も皆様とともに、じっくりと無為自然の生き方を学んでゆきたいと思います。
今月はピンチをチャンスに転換する秘訣とその根底にある哲学を学びましょう。
今日とりあげた節は老子第五十八章の「禍は福の倚る所。福は禍の伏する所。」です。
私達の人生は、どんなに日々努力を重ねても、幸運な事ばかりが続くわけではありません。
予定外の出来事で不運に見舞われる事もありますし、またふとした切っ掛けで思わぬ所から幸運が巡って来たりします。
これらについて『老子』は次の様に語っています。
――禍が来ても実はその陰にはもう幸せが寄り添っており、幸運の陰には、禍が潜んでいると。
つまり、どんなピンチな状況に陥っても実はそこにはすでにチャンスの女神が救いに来ていると教えているのです。
なんて素敵な考え方でしょう。
たとえば、クライアントの意向を誤解して、仕事に失敗しピンチだと思った事が、実はその時、誠心誠意対応したこちらの真剣さが伝わってクライアントの信頼を得る事が出来、長期的な顧客になってくれたという様な例は、ピンチのお陰でチャンスを掴めた好例です。
つまりどんなドン底の時でも、実はそこに幸運の女神は静かに寄り添ってくれているのです、落ち込む事はありません。
あきらめず明るい方へ前向きに進めば必ず幸せな道へ転換出来ます。
そしてまた逆に幸せな時ほど要注意です。
足を地につけて、浮かれないように、気をつけてゆきなさいよ、と『老子』は教えているのです。
また、もっと深くこの『老子』を読み解けば、幸せも不幸も、実は物事や現象の両面である事が解って来ます。
この世の中に絶対的な幸せとか、絶対的な不幸という事は無いのです。あらゆる変化を柔軟に受け入れて、何にも囚われない、決めつけない水の様な生き方が出来れば、私達は物事の真理により近づく事が出来、人生の大きな変化さえ楽しみながら生涯現役の人生の旅を続ける事が出来るのです。
さあ、今年も『老子』に学び、水の様に自由自在に生きてゆこうではありませんか。
※このページは、KKベストセラーズ発行の月刊誌「一個人」の連載記事
「人生を最高に生きる 老子の言葉(早島妙聴監修)」をご紹介しております。
この連載は、定本「老子道徳経の読み方 早島天來編」に更に詳しい解説を加え、
老子の言葉をわかりやすく伝えています。
更新日 2018年1月10日