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― 人生を最高に生きる 老子の言葉 ―
第三部 自分の心をどこにおくか
第三十七章 無為にして為さざるはなし道は常に無為にして
而も為さざるは無し
~天の道は無為自然であり、すべてを動かしている~
暦は立春、厳寒の中、水仙や梅などが咲きはじめ、時折吹く風が運んでくれる太陽の暖かさに春を感じてほっと心が和みます。
さあ、今月は『老子』第三十七章に説かれた「道は常に無為にして、而も為さざるは無し」に学びましょう。
天地自然の道は、無為自然であるにもかかわらず、結果としてすべてを動かしてしまう力を持っているというのです。
私達人間の行き過ぎた欲望の追求によって汚してしまった地球環境を目の前にして、もっと「無為自然」を学び、柔軟な思考を取り戻し、地球にやさしい生き方をしてゆく事が、これから長くこの地球に住まわせてもらうためには、大切な事なのです。
私達人間が目の前の幸せを考えることは、ごく自然な事です。
たとえばより効率よく穀物を収穫しようと考えた時、天候異変や害虫に強い穀物を品種改良することは当然です。
ですが、自然を人間の力で変えることで得られる利益というのは限界があり、結果としてもっと大きな天地自然の力の前には、人間の力が及ばない世界があることを知る事になります。
そして、最初から天地自然の流れを理解して、方法を選び、自然と調和する道をゆけば、限界にぶつかることなく、幸せを共有し人類発展の道があると「老子」は教えています。つまり私達人間も天地自然のありかたに学び、無為自然の生き方をすればいいと言うのです。たとえば食料問題で考えれば、災害や病害に強い穀物を量産しようとするだけでなく、有るものを皆で分け合う生き方を探し、皆で幸せにゆく道を選ぶ事が大切なのです。
東日本大震災の折に、東北の方々が、わずかな食料や水を分け合って、決して奪い合いをせず、じっと空腹に絶えて仲良く過ごされたその生き方は、世界から賞賛されました。日本人の本来持つ、分かち合う共生の心こそ、人類の大いなる智恵と言えるのでしょう。天地自然の無為のありかたに学び、豪雪があり、また暖かい日があるように、良い事も、また都合の悪い事も、素直に受けいれて、まずは目の前の小さな譲り合いを実践してみませんか。
前へ行こうと思ったときに、ふと人とぶつかりそうになったら、ちょっと止まって道を譲る、そんな小さな譲り合いの心を持って過ごせば、きっと毎日小さな幸せと笑顔が増えて、楽しい日々を過ごす事ができることでしょう。
本当の豊かさって、そんな小さな幸せにあるのではないでしょうか。
さあ、この春も老子を学んで実践です!
※このページは、KKベストセラーズ発行の月刊誌「一個人」の連載記事
「人生を最高に生きる 老子の言葉(早島妙聴監修)」をご紹介しております。
この連載は、定本「老子道徳経の読み方 早島天來編」に更に詳しい解説を加え、
老子の言葉をわかりやすく伝えています。
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更新日 2018年2月13日