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― 人生を最高に生きる 老子の言葉 ―
老子第76章
柔よく剛を制す柔軟さこそが健康な若さである。
紀元前の中国に生まれた人類の叡智、世界的名著である『老子道徳経』から、今月は生と死について学んで見ましょう。私たち人間は、生まれてきた時は、柔らかく、骨まで柔軟です。ところが年と共に、だんだん体が堅くなり、死ぬと硬直状態になります。つまり体の柔軟さは、健康や若さのバロメーターであり、堅さは老化現象といえるのです。これは体だけではありません。考え方、思考方法も同じです。
若いときは、発想が自由で、考え方も柔軟ですが、年とともに学んだ知識や経験に縛られる上に、現代社会の競争原理、功利主義にさらされているうちに、考え方が狭く硬直し、脳も思考の柔軟さを失って、老化してしまうのです。
たとえば、最寄りの駅から自宅までの道を、皆さんはどうやって帰られるでしょうか。たいてい最短で、便利な道を通られるのではないでしょうか。そして、特別に用事でも無い限り毎日その道を通って帰宅するようになります。
ところが子供達は違います。駅から帰る道を歩く時も、子供達にとっては、友人と歩く楽しい一時です。道路脇の花を見つけてしゃがんでみたり、街路樹から落ちた葉っぱを拾ってみたり、また時には横道に入ったりします。
あぜ道を歩いている時など、道ばたのカエルや虫などを追いかけて草むらへ入り、水路にいるオタマジャクシと遊んだりします。
大人にとっては毎日同じに見える行き帰りの道も、頭の柔軟な子供達にとっては、毎日たくさんの興味あることが溢れている、まるでおもちゃ箱のような楽しい遊び場なのです。
私たち大人が、子供達の半分でも、家に帰る最短距離を足早に帰らずに、そこに起きている毎日の少しずつの変化に興味を持ち、日常の変化に気づく柔軟さを持てたら、私たちの人生は、ずっと楽しい日々となることでしょう。
朝、窓をあけて薫る空気の香りも、そして鳥の声も、木々の葉の大きさや色づき、花や実をつけた自然など、すべてが昨日と同じものは一つとして無いのです。
無機質な高層ビルの会社に到着するまでのカフェでかき氷始めましたという旗が立ったという変化も、毎日会う同僚に子供が生まれて今日は本当に嬉しそうだったり、事務所のお手洗いに置かれた一輪の花に掃除をしてくれた人の優しさを思い、窓から見える入道雲に盛夏を感じるなど、私たちの日常にも、毎日たくさんの変化があるのです。
ただ仕事の効率だけを考えて大切な一日を過すのでなく、子供のように、まわりの変化に興味を持って生きれば、仕事のアイデアも浮かび、人間関係も楽しくなり、家庭での団らんの一時も会話が弾むことでしょう。
それこそが、若々しい柔軟な生き方であると老子は教えているのです。
日常に楽しい変化を見つけて、脳を柔軟に、さあ、若返りです。
※このページは、KKベストセラーズ発行の月刊誌「一個人」の連載記事
「人生を最高に生きる 老子の言葉(早島妙聴監修)」をご紹介しております。
この連載は、定本「老子道徳経の読み方 早島天來編」に更に詳しい解説を加え、
老子の言葉をわかりやすく伝えています。
更新日 2016年8月10日