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― 人生を最高に生きる 老子の言葉 ―
第一部 人の道、天の道とは何か
第十六章 静はすべての根源
至虚極、守静篤。
~虚を放すこと極まり、静を護ること篤し~
新たなスタートの春、生命が生き生きと成長する季節です。
会社の中での人事異動で新しい部署への一歩を踏み出される方、また長年の仕事に一区切りをつけて、第二の人生を歩みだされる方や、それを見守るご家族の門出の季節に、古代中国に生まれた人生の達人、「老子」の珠玉の言葉をお贈り致します。
今月は第十六章の「道」TAOの究極の世界「虚、静」についてです。
「老子」には、この広大な宇宙に貫徹している真理が説かれています。
そしてこの16章では「虚」と「静」の大切さを語っているのです。
私達人間が、幸せに生きる為のポイントは、なんといっても心身が健康で、その気が調和している事です。
ところが、加速度的にコンピューター化されていゆく現代社会の中で、インターネットに溢れ出す情報の洪水の中で、すでに私達の脳は、膨大な情報に無感動となり、冷静な判断能力は低下して、悲鳴をあげているように思います。
結果として大量の情報を処理する能力にたけたコンピューターやロボットを、人間が使うのではなく、まるで使われている状態に移行しようとしている、急激な時代の流れに、不安を覚える人も少なくありません。
さあ、ここで私達人間が、もう一度人間らしさを認識し、その能力を発揮する時が来ているのです。
私達人間が生涯現役で楽しく元気に生き抜く為には、意識して、デジタル情報から目をあげて、自分自身の静の時間を作り、心や体を休める事が重要です。
特にレジャーに出かけなくても、自然の光を浴び、鳥の声に耳を傾け、ほほをなでる春の風を楽しみながら、ちょっと近所を散歩してみる事で溢れる情報につかれた脳と体はリフレッシュすることでしょう。
この喧噪の時代、私達人間に本当に必要な薬は、制約のない、そして人工的な音楽や画面から離れた、虚と静の時間を、一日少しでも良いので意識して持つことではないでしょうか。
その自然との対話の一時が、人生にとって本当に大切なものは、私達のすぐ側にあるだと、気付かせてくれる事でしょう。
台所で妻が夕食の為に野菜を切る包丁のトントンという音、窓から見える空の色、お気に入りの作家の本を開いてゆっくりと活字を追いながら、言葉で綴られる美しい景色を想像したり、たわいない会話をしながら夫婦で飲む一杯のコーヒー。
これまで一生懸命守り抜いてきた人生の宝が奏でる音や景色を味わいながら、この日常こそが幸せであることを忘れずに、心身をリフレッシュして、また次の一歩を踏み出しましょう。
※このページは、KKベストセラーズ発行の月刊誌「一個人」の連載記事
「人生を最高に生きる 老子の言葉(早島妙聴監修)」をご紹介しております。
この連載は、定本「老子道徳経の読み方 早島天來編」に更に詳しい解説を加え、
老子の言葉をわかりやすく伝えています。
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更新日 2018年4月10日